屋号の決め方|個人事業主の屋号は同じ名前でもいい?重複のルールと確認手順【2026年】

屋号の決め方:同じ名前でもいい?重複のルールと確認手順

※制度については、2026年10月9日時点の国税庁・e-Gov法令検索などの情報に基づいています。個別のケースについては、税理士・弁理士・司法書士などの専門家に確認してください。

開業届を書き始めたものの、「屋号」の欄で手が止まる人は多いでしょう。考えた名前を検索すると、すでに同じ名前のお店や会社が見つかる。屋号は他の人と同じ名前でもいいのか、決定前に何を確認すべきなのか、迷いやすいところです。

この記事では、屋号と会社の商号に適用されるルールの違いを条文に沿って整理します。そのうえで、屋号を決める際のポイントや、開業届・銀行口座・法人成りでの扱いをまとめました。また、屋号によく使われそうな言葉について、同じ名前の法人が何社あるかを当サイトの商号衝突チェッカーで調べた結果も紹介します。

屋号は同じ名前でもいい?登記されないため「重複の禁止」はない

会社の名前である商号は、登記の対象です。商業登記法27条では、他人がすでに登記した商号と同じで、本店の所在場所も同じ場合は登記できないと定められています。つまり、住所が異なれば、同じ商号の会社でも登記できます。

一方、個人事業主の屋号は通常、登記されません。登記がないため、他人と同じ屋号を付けること自体を止める仕組みはありません。開業届の様式や書き方にも、屋号の重複を禁止する決まりは設けられていません。

ただし、個人でも商号を登記することは可能です(商法11条2項)。登記をした場合には、会社と同様に商業登記法27条の対象となります。

項目 会社の商号 個人事業主の屋号 根拠
登記 設立の登記の際に商号を登記する 通常は登記しない(希望すれば商号として登記が可能) 会社:会社法49条・911条3項2号(合同会社は914条2号)
屋号:商法11条2項
同じ名前の扱い 同じ商号で本店所在場所も同じ場合は登記できない 重複を防ぐ仕組みはない 商業登記法27条
他の事業者と誤認させる名前 不正の目的での使用は禁止(会社・屋号とも) 会社法8条、商法12条
有名な名前との混同 不正競争防止法が適用される(会社・屋号とも) 不正競争防止法2条1項1号・2号
登録商標 名前を商品・サービスの目印として使うとき、同じ・似た商品やサービスの登録商標とぶつかると侵害になり得る 商標法25条・37条
誤認させる文字 他の種類の会社と誤認させる文字は使用できない 「会社」と誤認させる文字は使用できない(「株式会社」など) 会社:会社法6条3項
屋号:会社法7条

同じ名前で困る場合もある:不正競争防止法と商標法

登記による規制がなくても、あらゆる名前を自由に使えるわけではありません。屋号にも次の法律が適用されます。また、屋号を商品・サービスの名前(目印)として使う場合には、商標権が関わってきます。

  • 不正競争防止法2条1項1号:広く知られている他人の「商品等表示」(氏名・商号・商標など)と同じか似た表示を用い、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為
  • 同2号:他人の著名な商品等表示と同じか似た表示を、自分の商品等表示として用いる行為
  • 商標法25条・37条:商標権者には、登録した商品・サービスについて登録商標を使う権利があり、似た商標や似た商品・サービスでの使用も侵害とみなされる

不正競争防止法が禁止しているのは、言葉そのものではありません。対象となるのは、広く知られた・著名な表示と混同させるような使い方です。営業上の利益を侵害された側は、その使用の停止や予防を求められます(3条)。一方、登録された商標は、知名度にかかわらず効力を持ちます。屋号を看板や商品・サービスの名前にも使うなら、J-PlatPat での商標検索を済ませておくと安心です。

屋号の決め方:読みやすさも含めて確認したい5つのポイント

  1. 何の事業か伝わるか:「〇〇デザイン」のように業種を含めると、事業の内容が伝わりやすくなります
  2. 読み方に迷わないか:初めて見た人でも声に出して読めるか、電話で伝えられるかを確認します
  3. 同じ・似た名前が多すぎないか:近くの同業者が同じ名前を使っていると、混同されやすくなります
  4. 商標とぶつからないか:屋号を商品・サービスの名前(目印)にも使う場合は、J-PlatPat で読みの近い登録商標を調べます
  5. 会社にしても使えるか:将来の法人成りを考えているなら、商号として登記できる文字か、ドメインを取得できるかも確認しておきます

2つ目の読みやすさについては、当サイトの運営者も悩みました。運営会社の社名「Edel Hearts(エーデルハーツ)」は、ドイツ語と英語を組み合わせた名前です。決める際には「初見で読めないのでは」「読みづらいのでは」と迷い、自社サイト(edel-hearts.com)の会社情報には社名の読み方を添えています。造語や外国語を選ぶ場合は、読み方を添えられない場面(口座名義、電話、検索)も想像しておくと安心です。

名前の候補が挙がったら、次の順番で調べていくと、確認漏れを減らせます。

屋号を決める前の確認手順。声に出して読む、同じ名前の法人を調べる、同じ名前のお店や個人事業主を検索する、商品・サービスの名前に使うなら登録商標を調べる、会社と誤認させる文字を入れない
屋号の候補が挙がったら、読みやすさ・同じ名前の法人とお店・登録商標・使えない文字の順に確認する

屋号が決まったら:開業届の屋号欄と銀行口座

国税庁の「個人事業の開業・廃業等届出書」には、「屋号」と「フリガナ(屋号)」の欄が設けられています。事業を始めた年分の確定申告期限までに提出します(所得税法229条)。

銀行によっては、口座名義に屋号を入れる屋号付き口座を開設できます。たとえば PayPay銀行では、個人事業主の屋号付き口座の申し込みに必要なものとして、本人確認資料と事業実態確認資料(個人事業の開業等届出、営業許可証など)を挙げています。必要書類は銀行ごとに異なるので、申し込み先の案内を確認してください。屋号は口座や請求書でも使います。開業届を出す前に決めておけば、手戻りを減らせます。

法人成りするとき、屋号をそのまま会社名に使える?

個人事業を会社にする(法人成り)際には、屋号を社名として引き継げます。ただし、会社の商号となるため、次の点を確認する必要があります。

  • 商号には「株式会社」「合同会社」などの種類を必ず入れる(会社法6条2項)
  • 同じ商号の会社が同じ本店所在場所にすでに登記されている場合は登記できない(商業登記法27条)
  • 商号に使える文字には決まりがある(日本文字のほか、ローマ字・アラビア数字と「&」「’」「,」「-」「.」「・」の符号。商業登記規則50条と法務大臣の指定)。符号を使えるのは字句を区切るときだけで、商号の先頭や末尾には使えない(「.」は省略を表す場合に限って末尾に使える)

個人事業の廃業を届け出るときも、同じ様式を使います。法人の設立に伴って廃業する場合は、設立法人名・法人納税地・設立登記の日を記入する欄があります。

商号衝突チェッカーで「同じ名前の法人」を確認する

商号衝突チェッカーは、国税庁の法人番号公表サイトのデータを利用しています。法人ではない屋号は法人番号公表サイトに掲載されていないので、同じ屋号の個人事業主がいるかどうかは判定できません。一方、同じ名前の法人(会社・医療法人・NPO法人など)があるかを調べることはできます。屋号を検索する際は、法人の種類で「屋号・その他(法人格なし)」を選んでください。同じ屋号の個人事業主やお店については、検索エンジンや地図アプリで名前を検索して確認します。

以下は、屋号によく使われそうな言葉と当サイトの運営会社の社名を、2026年10月9日にチェッカーで調べた結果です(データ更新日2026年9月19日、閉鎖済みの法人を除く)。

名前 完全に同じ商号の法人 その語を含む法人 チェッカーの判定
さくら 652社 5,242社 高い
あおぞら 210社 640社 高い
ひだまり 153社 350社 高い
つむぎ 139社 336社 高い
こもれび 71社 146社 中程度
エーデルハーツ 0社 0社 低い

「完全に同じ商号」が示すのは、株式会社などの法人格を除いた名前が一致する法人の数です。ひらがなの5語のうち4語では、法人だけで100社を超えていました。同じ屋号を使う個人事業主がいても、この数には含まれません。

屋号によく使われそうな言葉と同じ名前の法人の数。さくら652社、あおぞら210社、ひだまり153社、つむぎ139社、こもれび71社、エーデルハーツ0社
屋号によく使われそうなひらがなの5語のうち4語で、同じ名前の法人だけでも100社を超えていた(2026年10月9日、商号衝突チェッカーで確認)

候補の屋号を入力すれば、同じ名前の法人の数や所在地、使える文字をまとめて調べられます。英字表記も入力すると、ドメインの空きも確認できます。

商号衝突チェッカーで屋号の候補を確認する

まとめ

  • 屋号は登記されないため、他人と同じ屋号を付けること自体を止める仕組みはない
  • ただし、不正競争防止法(混同・著名表示)は屋号にも適用され、商品・サービスの名前(目印)として屋号を使う場合は商標権も関わる
  • 「株式会社」など、会社と誤認させる文字を屋号に使うことはできない
  • 屋号を決める際は、事業が伝わるか・読みやすいか・同名が多すぎないか・商標・法人成り後も使えるかを確認する
  • 開業届には屋号とフリガナの欄があり、屋号付き口座を開設する際に開業届などの書類を求める銀行もある
  • 法人成りで屋号を社名に引き継ぐ場合は、法人格を入れ、同じ本店所在場所に同一商号がないかを確認する

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